六尺褌
六尺褌について
六尺褌は最も構造が簡単な褌です。要はただの長い布なのです。
六尺褌の名前のとおり鯨尺(注)で六尺=37.88p×6≒230p前後の布を腰に巻くのです。
六尺褌の締め方には前垂れがあるように締める方法(以下「前垂れがある締め方」と表記)と前垂れ部分を股間を通し、後ろで留める方法(以下「前垂れのない締め方」と表記)があります。
前垂れがある締め方は褌を簡単に緩めることが出来て、用便の時などに便利です。
前垂れがない締め方は、しっかりと堅く固定することができます。体の動きが激しいお祭りなのはこの締め方が一般的です。
六尺褌は普通は店では売っていません。一般的には晒し木綿を買ってきて自分の体に合う大きさに切って使います。晒し木綿の買い方に関しては「褌を買う」を参照ください。
長さは体格に合わせるわけですが、前垂れがある締め方の場合、「腰回り×3」より若干(20p程度)短いぐらい、前垂れがない締め方の場合「腰回り×3」より少し長いぐらいが目安です。
越中褌との大きな違いは後がTバック状態となることと、越中よりきつくしっかりと締められることです。
越中褌を「ゆるい」褌であると表現すれば、六尺褌は「きつい」褌であるともいえますが、締め加減は自由に調節できますし、臀部露出していることで他の下着では得られない装着感があります。
六尺褌は明治期までは日本人男性の標準的な下着でした。葛飾北斎をはじめとする浮世絵や洒落本の挿絵に見られる町人の下着は、多くは六尺です。 しかし江戸末期から、医者や知識人、老人の間から越中褌が普及し始め、六尺は越中にとって変わられます。
一般的にいって江戸時代までは、おおざっぱに言って、 越中褌=ゆるい=非労働時の下着 六尺褌=きつい=労働時の下着
と考えてよいでしょう。
もちろん現代人であるわれわれは個人の趣味で選んでかまいません。私はその日の気分で越中も六尺も締めます。
六尺褌の構造
晒し木綿の例(10m単位で売られています)
六尺褌の締め方
T、前垂れがある締め方
1、布を胸の付近にあて、他方の端を股間をくぐらせます。
2、後ろに回した布を腰に巻いていき、端をおしりの中心付近でくぐらせます。
上方向に引っ張るようにして形を整えるとともに、締め加減を調整します。
3、通した端を反転させ横回しにねじるように一回から二回巻きます。
さらに反対側の横回しに残った部分を巻きつけて処理します。
4、前垂れの形を整えて出来上がり。
U、前垂れがない締め方
途中までは前垂れがある締め方と同じです。
1、前垂れがある締め方より布を多くとり、肩にかけます。
反対の端を股間に通します。
2、後ろに回した布を腰に巻いていき、端をおしりの中心付近でくぐらせます。
上方向に引っ張るようにして形を整えるとともに、締め加減を調整します。
3、通した端を反転させ横回しにねじるように一回から二回巻きます。
さらに反対側の横回しに残った部分を巻きつけて処理します。
4、前の余った布を股間に通し、後ろの「たてまわし」に数回巻きつけながら上へ持っていきます。
そのあと手順3と同様に端を処理します。
5、前垂れがある締め方よりも若干幅が狭くなるように、前袋を整えます。
(注)日本の尺貫法による長さの単位には、主として建築で使われる曲尺(かねじゃく)と、裁縫で使われる鯨尺(くじらじゃく)があります。
曲尺:一尺=30.3p
鯨尺:一尺=37.88p
とかなりの違いがあります。曲尺の方が一般的な単位ですが、褌は衣服なので鯨尺を使います。
「尺」に二種類あることは意外と知られていないらしく、成書でも間違って使用している例が見受けられます。
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