褌と健康



近年、一般の下着売り場でも越中褌を見かけるようになりました。1000円から2000円のものが主流のようですが、縫製もしっかりしているものが多いようで喜ばしいことです。
これはどうやら政府推奨の「クール・ビズ」キャンペーンの流れに乗ったものらしいのです。パンツよりも、夏でも涼しい越中褌を、というわけです。


精子をつくる


越中褌がパンツより涼しいというのは、概ねそのとおりです。
越中は締めかたにより、限りなく“ゆるふん”にすることができますから、風通しはすこぶる良いのです。
また、パンツと違い、麻や麻混、紅梅(下注)など涼しい素材の布が自由に選択できますから、肌触りも一段と爽快です。

男性における股間の涼しさというのは、実は医学的にもとても重要なのです。
男性の精巣(睾丸:いわゆる金玉)は、体外に飛び出す形でついています。
そして陰嚢(いわゆる玉袋)には無数の皺があり、外気温などの周囲の環境に敏感に反応して伸び縮みします。
寒いときや緊張した時は縮み上がり、暖かいときやリラックスしていると時はダラリと垂れ下がります。
これは、精子を製造する器管である精巣の働きが温度や自律神経と密接に関連しているからです。精巣は自然な状態では、体温の2度前後低く保たれるのが精子の生産のためには都合がよいと医学的に証明されています。
パンツを履くと、環境に関係なく常に精巣が体に押し付けられるわけで、精巣にとっては迷惑このうえない話です。

ですから、褌は、パンツより生理的に自然な下着と言えるでしょう。
政府の推奨する「クール・ビズ」に乗るわけではありませんが、「夏には、越中褌」から初めてみても悪くないかもしれません。

褌を締めるようになったら子供できた、というような話をきくことがあります。
これは、上に書いた精子生産機能の効用もあることが予測されますが、精神的な面もあるのではないかと思います。
つまり、褌は日本男性の「男らしさ」の演出をするアイテムとして機能しうるというこことです。
これな、変なことではありません。「らしさ」というのはその民族の歴史的、文化的伝統に帰属するものなのです。
だから、ブリーフやトランクス姿の自分をみて、なんとも思わなくても、褌をしめた自分をみて「カッコいい」と思うことはむしろ当然なのです。

(注)紅梅(こうばい):タテ、ヨコともに太さの違う二種類以上の糸を使用し、表面にワッフル状の凸凹感を出している織物。細い糸の部分の通気性がよく、清涼感が出て肌触りが良い。


アレルギー



アレルギーのうち皮膚が物質へ触れることで生じるアレルギーを接触性アレルギーと言います。アレルギーは現代文明の発達とともに深刻になってきた現代病です。
ごく大まかに言うと、現代文明の発達によって、私たちは近代工業発達にはこの世に存在しなかった物質に囲まれて暮らしているのです。これでは、私たちの体が異常な反応を起こすのは当然であるといえましょう。

私は、近代文明を否定しようというのではありません。衣服に関しても、汗かきの私は、近年の高機能化学繊維のお世話になっていますし、私の文章が読者に届くのもPCやインターネットの普及のおかげです。
しかし、現実に困っている人にとっては別です。

アレルギーや免疫異常など、体の異常な反応によって苦しんでいる人が、その環境をより自然なものに変えていこうとすることはあたりまえなことです。
アトピー性皮膚炎に悩むある女性は、洋服を捨て、褌と和服の生活に変えてしまいました。
その生活を選択することで、近代的素材から脱却できたのです。いわゆるパンツやショーツあるいは一般洋服では、化学繊維や合成ゴム、あるいはプラスチック、金属などを使ったものが多く、生活を一新することで、それらに“びくびくする”生活から彼女は解放されたのです。

もちろん、そのような生活を続けるにはある程度の学習や慣れが必要です。しかしそれはすこし前の日本人ならだれでもやっていたことです。
下着に褌を選択すれば、その生地は無限といっていいでしょう。絹、麻、木綿、化繊。絹と言っても平織りから縮緬、紬まで多種多様の技法があります。日本の精緻な伝統技術を文字通り肌で感じて、それを健康に役立てられるのです。




褌生活に戻る




 
inserted by FC2 system